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【考察1】
糖尿病性網膜症における潜時の延長が新生血管発生のメルクマールになる事8)や、静脈閉塞症での抗VEGF薬液の眼内注射で網膜血流改善時に潜時が短縮する事9)が認められている事から、SGL後に潜時が短縮して一時的な急性視野改善が生じた症例には何らかの網膜虚血性変化が急性に改善している可能性が考えられる。
そして生データの振幅の増大は網膜内層や中層の活性化の可能性が示唆される 10)。
近年、緑内障と眼循環障害が関係する報告が多く、特に緑内障発生前から眼循環障害が生じている報告がある 11)。さらに阪大の不二門らの研究に、TES(経角膜網膜電気刺激) 治療があり、虚血性視神経症や網膜色素変性症に有効性が得られている 12)。
TES治療による視野改善報告と、一時的ではあるが、SGL後の緑内障の急性視野改善症例などの存在は、類似性があり、フリッカーERGの振幅の増大や潜時の短縮症例を中心に、SGL後に網膜の活性化や虚血性変化が改善している可能性が考えられる。
【考察2】
近年緑内障眼に脳の上行性障害が生じているという報告があり、サルの実験的高眼圧症で脳の視神系外側膝状態(LGN)に変性が生じている事が示されている13)。
このLGN周囲や視床及び視床下部の血流がSGL後に上昇する事がペインクリニックなどで実証されている。(第40回日本リハビリテーション医学会ランチョンセミナー:スーパーライザーによる脳血流改善効果についての考察.スーパーライザーの星状神経節近傍照射前後の脳血流変化.協愛病院.具志堅隆。)
これらの報告から、長期に及ぶ難治性緑内障の視野障害の進行防止の為に、 LGN周囲の血流上昇作用を持つSGLがプラスに作用する可能性が考えられる。さらに日常診療の経験では、SGLはストレス性眼瞼痙攣やストレス性視力障害にも大変有効である。
SGBの権威者である若杉文吉は、SGBの効果から、生態におけるホメオスタシスの中枢である視床下部が密接にストレス性疾患や自律神経疾患と関係するとする14)。
従ってSGLは、緑内障の上行性障害の予防だけではなく、ストレスとの関連がある多様性緑内障にこそ、SGLの有効性が期待されると判断している。
まとめ
星状神経節近傍にSGLを行い急性視野改善や、眼痛が軽減するなどの自覚症状が改善する緑内障の患者を中心に、SGL単独での緑内障治療効果を検証報告するために、SGL前後短時間のRETevalによるERGの変化を全20症例39眼で観察した。その結果、フリッカーERGに振幅の増大傾向が観られた。
急性視野改善例では、フリッカーERGの潜時が短縮していた。以上の結果から、多因子性疾患である緑内障の長期の視野障害の進行防止のために、SGL前後のフリッカーERGの潜時と振幅の波形変化を捉える事は、その多様性を認識する結果となり、特にSGL照射前後に潜時が短縮したり、振幅が増大するような視野改善も含めたSGL単独での有効性が認められるグループに対しては、外科的手術も含めたエビデンスが確立された眼圧下降療法と併用してSGLを継続して行う事が、緑内障の脳の上行性障害の予防も含めて、より有効的な緑内障の治療効果を発揮する可能性が示唆された。