(症例1) 40歳前後 男性
主訴 右眼精疲労
初診 H13年11月頃
病歴 最近 コンピューターの画面及び 新聞の活字が見えにくいなど
近見時視力障害と眼精疲労を訴え来院 時には眼痛まで発生する。
眼鏡処方の希望は全く無く、眼鏡に関しては敬遠ぎみでした。
<初診時>
視力 RV=1.0(n.c) LV=1.5(n.c)
オートレフ値 R:S−0.25D::C−0.5DAx170 L:S+0.50D::C−0.25DAx174
RT=19mmHg LT=15mmHg
1mビノキュラー(投影式弱視鏡)では 両眼視機能不全を示していました。
プリズムバーAPCT (交代プリズムカバーテスト)値は
5m 18僞T (内斜視) 30cm 14僞P'(内斜位)
一応CUT(カバーアンカバーテスト)でも 5mで内斜視、30cmでは内斜位 でした。
隅角検査では両眼とも明らかな狭隅角所見を見ました、加えて右眼に中等度の左眼に軽度の
視神経萎縮を見ました。
(写真1.右視神経 )

写真2.

写真3.
(左写真2.AC/C比=1/4 右写真3.隅角鏡にてシュワルベラインが見えない所見)
以下、さらに半年以上現在も経過観察が行われているこの症例の各種状況をご報告させて戴きます。
<12月3日再診時所見>
眼圧はRT=22mmHg. LT=21mmHg(正常値10-20mmHg)とやや高値を示していました。
オートレフ値は R:S−0.5D::C−0.5DAx20 L:S+0.5D::C−0.50DAx135
フォロプター検査では 遠見眼位8僞T(内斜視)しかし両眼視不全のためそれ以外の、
測定結果は一部省略致します。当院では眼鏡処方を想定して、より掛け枠に近いデーターが得られる
フォロプター検査をファーストチョイスに実施しております。
近見単眼調節ラグ R+1.75D L+0.75D
調節力 R+2.25D L+3.25D
このように、優位な上記調節ラグ値の左右差を認めたため内斜位斜視と右眼調節不全症を考慮して
サイプレ散瞳による調節麻痺薬の点眼を施行しました。

写真4..
(写真4.サイプレ散瞳時の虹彩所見 虹彩は中等度散瞳に留まっている)
サイプレ散瞳後オートレフ値は
R:S+1.25D::C−0.50DAx9 L:S+3.00D::C−0.25DAx16
この散瞳前後のオートレフ値の大きな相違の結果 この方は日常から常に+1.
0Dの調節を継続強いられていることが想定され、オートレフ時には 不完全な
がら残された調節力により近接性調節を生じていると判断されました。
従ってオートレフの値は この場合眼鏡処方の目安程度にしかなりません。
サイプレ点眼中等度散瞳前の眼圧値は RT=17mmHg LT=19mmHgでした。
サイプレ点眼中等度散瞳後の眼圧値は RT=22mmHg LT=21mmHg でした。
即ち、中等度散瞳後に中等度の眼圧上昇を認めました。これは程度の問題はあり
ますが高眼圧の原因に 閉塞隅角機転が関与している事を示す所見でした。
中等度散瞳後の眼圧は 厳重に管理致しました。
<12月5日下記眼鏡処方箋発行>
Prescription.
RV=0.7(1.0XS+1.25D::C−0.25Ax90) LV=2.0(1.2XS+1.25D)
PD69.5mm(R36.0, L33.5)
APCTは 5mで8凾dT(内斜視)の状態 でした。(上記眼鏡装用下にて)
この眼鏡は スタッフの経営する併設店 視力研究所にて作製致しました。
初診時から眼疾患の状態と眼の屈折、眼位に関して綿密なコミュニケーションの元,
眼鏡士や眼科ORTと協力してPrescription.が作製されました。
はじめは 眼鏡が希望では無かった患者さんでしたが その必要性をすぐに十分に理解していただけ
視力研究所での眼鏡作製となりました。
しかしながら眼圧はRT=21mmHg LT=22mmHgで、やはりやや 高眼圧が継続中でした。そこで、
{12月7日 両眼レーザーイリドトミー施行}
視神経所見と 明らかな狭隅角 及びサイプレでの眼圧上昇から総合的に判断して
閉塞隅角機転が眼圧上昇に関与していると判断されたため 隅角の慢性閉塞によ
る慢性閉塞隅角緑内障の発生を回避するため両眼に緑内障改善のレーザーイリドト
ミーを行いました。

写真5.

写真6.
(左写真5:右眼11時の周辺虹彩切除部とYAGレーザに伴う軽度虹彩出血)
(右写真6:角膜内皮所見 細胞数は正常域)
レーザーに際しまして当院では全員に角膜内皮検査で異常の無いことを確認致し
ます。加えてさらに時に写真のような軽度出血はありますが、内皮障害が少ないとされる、
アルゴン+YAG併用レーザーにて慎重に、レーザー緑内障手術を行っております。
<12月18日レーザー施行後約10日目および眼鏡処方後の所見>は
RV=(1.2XS+1.25D::C−0.25AX90) LV=(1.5XS+1.25D)これは製作した眼鏡の度数です。
RT=16mmHg LT=15mmHg 点眼は非ステロイド点眼のみです。
眼圧下降点眼は投与しておりません。眼圧はこのように低下傾向を見ました。
近方視の視力は NRV=(0.4X上記KB) NLV=(0.9X上記KB)でした。
このときの患者さんの愁訴は以下のとおりでした。
「近見時の視力は改善した。しかしまだコンピューターデイスプレーが
疲れる、眼精疲労は改善していない」との訴えがまだ継続しておりました。そこで
このまま約1ヶ月製作眼鏡を使用していただき、1ヶ月後の目の状態を見て
処方がこのままで行けるのかどうかを再度判断する事になりました。
尚、両眼視機能改善のため、ブロックストリング視能訓練指導を補足致しました。
眼圧を中心としたフォローは 12月18日 RT=16mmHg LT=15mmHg
12月22日 RT=15mmHg LT=13mmHg で明らかに術前より両眼圧値は低下傾向を示しておりました。
眼鏡矯正視力は 両眼伴に1.2と遠見視力は良好でしたが
12月22日オートレフ値は
R:S−0.75D::C−0.50DAx6 L:S+1.00D::C−0.50DAX171 と多少の変動を見ました。
<眼鏡処方後、約1ヶ月後の所見>
H14年1月12日 RT=13mmHg LT=11mmHg眼圧は低下中です。
RV=(0.6XKB) LV=(0.7XKB) BV=(1.5XKB) 、KBは処方製作眼鏡の事です。
デスクワーク時は この眼鏡で左眼で見るイメージがやや強いが、以前より
かなり快適になったとの改善の良いコメントを戴き 患者さんの初期の訴えはようやく
改善されつつあると判断されました。但し遠方視力は若干不十分ではありましたが患者の
主訴であるコンピューターなど近方視での眼精疲労がかなり改善されていたため、また下記のように
若干の眼位の改善傾向が見られたため、このままこの眼鏡で続行して経過観察する事になりました。
カバーアンカバーテストは(CUT)5m にて4僞P(内斜位)に改善 です。
APCTでは5mで 8僞T内斜視)でほぼ眼鏡製作時と同じ値でした。
<眼鏡処方後、約2ヶ月後の所見>
H14年2月9日 RV=(0.6XKB ) LV=(1.2XKB ) RT=15mmHg LT=15mmHg
APCTも5mで2僞P Phoira (斜視から斜位)に改善!!同時に近見時の眼精疲労はさらなる改善を見ておりました。
<眼鏡処方後、約3ヶ月後の所見>
H14年3月16日 RV=(0.7XKB) LV=(1.5XKB)所がここで、初めて自覚的に右眼の視力低下を訴え
再来院 されました。
´

写真 7.

写真 8.
(左写真8.右眼後極部眼底、軽度動脈硬化性変化 右写真8.軽度斑状出血と軟性白斑)
写真8のように 分枝静脈閉塞症による軽度眼底出血の発生を見ました。
そこで眼科と平行して内科を受診して頂き高トリグリセリド血症+痛風と診断され、
内科にてその加療が開始されると同時に当院からも小児用バッファリンや出血吸収剤の投与が
開始されました。但し、耐糖能異常はありませんでした。
その後内科および眼科の加療が奏効し右眼の眼底出血は次第に改善、H14年5月現在
眼底病変もほぼ正常に改善中です。自覚的視力低下も現在ほとんど生じておりません。
<最近の所見>
H14年5月11日 RV=(0.7XKB) LV=(1.2XKB) (KBは処方製作眼鏡)
RV=(1.2X S+0.25D::C−0.25D AX20)
RT=16mmHg LT=14mmHg
オートレフ値 R:S−0.25D::C−0.25D Ax174
L:S+1.00D::C−0.50D Ax147
デスクワークなどは特にこの眼鏡が、かかせなくなったと大変喜んで戴いております。
また 日常でも殆どこの眼鏡を装用されておられます。
(まとめ)
灘区山中眼科と視力研究所が タッグを組むことになったのは、H13年12月からです、実はこの症例は
山中眼科が視力研究所に協力を依頼した、記念すべき第1号の眼鏡処方症例です。
(視力研究所には眼鏡士AAA+ORTの有資格者が常にスタンバイしております)
さて振り返って感じますことは2つです。第1に、このように複雑な眼鏡のフォローが
必要なシニアー前後のご年齢になりますと 場合によっては 眼精疲労の原因は確かに多くは
屈折異常ではありますが、時にはこの疾患のように、緑内障や動脈硬化性変化に基づく 眼底出血など
複雑な様相を呈する場合がやや多くなると思われる事です。
第2に、もしもですが、屈折に精通した医院ではなく初期段階で適切な眼鏡処方が実施されなかったと
すれば?また再診時のご不満にも適切なご説明が出来なければ?はたして。
初期緑内障や軽度の眼底変化をいずれも早期に発見して早期に治療その後の経過の観察は行えて
いたのでしょうか? やや疑問に感じております。
改めて、屈折診療の重要性を再認識 致します。 