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【緒言】
H26年日本眼科学会総会指名講演(中澤徹)により、 緑内障で適切に眼圧がコントロールされている405眼の検証で、約50%の症例で年間?0.5dbの緩徐な視野障害の進行が認められる事が確認された1)。
長期に渡る緑内障の患者の視機能を守るためには、エビデンスが確立された眼圧下降療法だけでは十分では無い事が示されている 1)。
また近年緑内障発生と眼循環が密接に関係している事が報告された 2)。
そこで、 緑内障の点眼療法以外の治療法としてSGB(星状神経節ブロック注射療法)と近似作用のあるSGL(スーパーライザー:近赤外線星状神経節近傍照射療法)(図1a.b)の検証を行った。SGBはペインクリニックで行われている治療法で、交感神経抑制効果による末梢血行促進や鎮痛効果だけでなく、網膜血流上昇作用が認められている治療法である 3) 4)。
SGLは、2001年に森眼科医院 森茂より第11回日本緑内障学会にて初めて緑内障への有効性が報告され、森茂により、SGLによる緑内障患者の視野障害の改善報告だけでなく、正常眼にてドップラー法による網膜血管径拡張作用などが報告された治療法である 5)。
その後2005年に宮崎義則も第15回日本緑内障学会にてSGLによる緑内障の視野改善報告を行い 6)、2006年には大阪医科大学 杉山哲也によりSGLの緑内障に対する効果の検討報告を行われSGLによる視神経乳頭血流上昇作用などが臨床眼科雑誌にて報告されている 7)。

(図1a.b)SGLは、光の中で最も生体深達性の高い波長帯の光(0.6μm~1.6μm)を、ピークパワー10Wでパルス照射出来る光線治療器である。即ち、直線偏光近赤外線は、血管の拡張・生体活性物質生産促進作用・神経興奮性の抑制などに関係し、鎮痛、消炎、創傷治癒に効果的とされている。星状神経節近傍照射療法SGLは、ペインクリニックで行われている星状神経節ブロック注射と近似した治療法である。星状神経節は交感神経の要所であり、直線偏光近赤外線が星状神経節に届くと、その光化学作用とほのかな熱で神経の興奮が抑えられ、交感神経が静まり副交感神経の働きが増強し、身体をリラックスさせて血行が改善する。さらに間脳や脳幹の血流が改善することで自律神経のバランスが改善する。(a)はSGL施行のサンプル画像 (b)は星状神経節近傍の解剖図
【方法】
緑内障患者へのSGLの効果の判定は、長期的に視野が改善する症例は報告されているが、眼圧下降療法と併用されるため、SGL単独での効果の判定は厳密には難しいと思われる。そこで可能な限りSGL単独での効果を立証するために、SGL前後の短時間(約1時間内外)の眼の変化を観察した。当院で緑内障と診断した全20症例39眼(正常眼圧緑内障15例、開放隅角緑内障1例、嚢性緑内障1例、閉塞隅角緑内障1例、強度近視眼緑内障2例)に関して、SGL前後のRETeval(図2)によるERG検査を実施、明順応無散瞳下でのフリッカーERGとPhNRの変化を計測した。さらにSGL後に自覚症状が改善する代表2症例(症例①SGL後に眼痛が軽減する。症例②SGL後に視界が明るくなる。)を提示し、RETevalによるERGだけではなく、静的視野検査、OCT.なども加えて、総合的にSGL前後約1時間程度のSGLの効果を検討した。同時にSGLの効果の判定のためLaser Speckle Flowgraphy (LSFG)も考慮したが、SGL前後の短時間の観察では、LSFGは光刺激が検査結果に影響し安いと判断し今回は代表症例①のみの観察となった(図3 a.b)。

(図2)小型無散瞳・皮膚電極仕様のERG測定装置:RETevalコンプリートタイプ
(図3a.b) 症例①の乳頭部のLSFG。 SGL後に軽度のMBRの増強を認めた。SGL照射前3回のMBRMAの平均値17.97。SGL照射後3回のMBRMAの平均値18.43。短時間での比較試験では、光刺激による脈拍の増大などがSGL照射前に認められ、検査結果に影響した。(a)SGL前の乳頭部LSFG画像12時21分 (b)LSFG後の乳頭部LSFG画像13時15分SGLは12時35分に施行した。